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HOMEフォレストヒルニュース > FH File No.101/2014.5.15
竹内竜次ギターリサイタル
〜比類なき真のギタリスト 稲垣稔氏を偲んで〜
稲垣稔氏は、天性の歌ごころとその揺るぎないテクニックによって、ギターという楽器の究極の美しさを表現した、類稀な日本人ギタリストでした。
その日本を代表するギタリストである稲垣氏が昨年6月、惜しまれながら54歳という若さで亡くなりました。
この度フォレストヒル音楽工房では『比類なき真のギタリスト 稲垣稔氏を偲んで』と銘打って、稲垣氏の愛弟子である竹内竜次氏のギターリサイタルを行ないます。

稲垣氏を初めて聴いたのは、私が弊社を立ち上げたばかりの1986年でした。その日、私の耳に飛び込んできた「音」は、この世界に足を踏み入れたばかりの私にとって衝撃的なものでした。それは稲垣氏が『世界的銘工 、ロベール ブーシェ』の楽器を完璧に弾きこなし、そこから紡ぎ出す「美音」でした。あの「音」は今でも私の耳に残っています。
竹内竜次
中野 義久/溝口慎一
中野 義久/溝口慎一
ブーシェ氏は、著名な画家でもあった氏自身が芸術に対して、生涯厳格な生き方をした人でした。若くしてフランスに留学した稲垣氏のその才能に惚れ込んだブーシェ氏は、芸術の厳しさと深い人間愛を稲垣氏に伝えたと言われています。芸術に対していつも真摯に対峙していたブーシェ氏と、ギターに対する純粋な情熱と希有な才能を持った稲垣氏が融合して、『比類なき真のギタリスト』として昇華したのです。ブーシェ氏は生涯154本の銘器を残しました。ブーシェ氏が亡くなった1986年の遺作No.154は稲垣氏の為に製作していたものでした。

私が最初に稲垣氏の演奏を聴いた’1986年に弊社を創業して以来、稲垣氏の九州ツアーを1991年、1998年、2003年、2008年の4度マネジメントする機会がありました。その演奏はまさに、正統的なクラシックギターの真髄と言うもので、どの公演も素晴らしく、聴衆に深い感動を残してくださいました。
2008年12月九州キリスト教会館にて弊社主催での最後のリサイタルとなってしまいました。
2008年12月九州キリスト教会館にて弊社主催での最後のリサイタルとなってしまいました。
一昨年、稲垣氏と次回の九州ツアーの話しをしていたばかりだったのですが、今となっては残念でなりません。しかし、日本ギター界に残した稲垣氏の芸術は決して忘れられるものではないでしょう。
今回、稲垣氏の愛弟子である竹内竜次氏のリサイタルを主催することは、少しでも稲垣氏に関われた者として大変意義深く感じています。共演者には竹内氏に師事し、稲垣氏にも指導を受けた溝口伸一氏、そして稲垣氏の旧くからの友人である中野義久氏をお迎えいたします。

稲垣氏に大きな影響を受けた竹内氏が今回のリサイタルにかける思いは、並々ならぬものがあります。是非、多くの方にお聴きいただきたいと思います。心よりお待ちしております。
(株)フォレストヒル代表 森岡 晃
「音楽家である前にギタリストでありたい」 稲垣 稔
フォレストヒルミュージックアカデミー、サンシティー音楽院 ギター科講師 竹内竜次
稲垣稔先生がお亡くなりになったのは昨年の6月。享年54歳という若さでした。

訃報を聞いて、なによりもまず頭に浮かんだのが、「もうあの音色を聴けないのだ」ということです。
その喪失感は非常に大きなものでしたが、今は、ギター史に名を刻む不世出のギタリストと同時代に生き、その演奏を生で体感できた幸せをかみしめるようにしています。

稲垣先生の演奏の魅力を語りつくそうとすると、一冊の本になってしまいそうですが、フォレストヒルの森岡社長のお言葉をお借りするなら、「ギター好きの首根っこを捉まえて離さないギタリスト」の一言に尽きると思います。私自身、初めて先生の演奏を間近で聴き、「ディアハンターのテーマ」の美しさに、興奮と泣きたいような感情(つまり感動ですね)を体験して以来、30年たった今も「首根っこを捉まれた」状態が続いています。
2008年11月 サンシティー音楽院主催第30回魅惑のギターステージリハーサル風景
2008年11月 サンシティー音楽院主催第30回魅惑のギターステージリハーサル風景
先生の演奏を聴く最後の機会になってしまったのが、2008年九州ツアーの日向公演でしたが、初めて先生の演奏を耳にした時の8歳の少年の心の震えみたいなものが、まざまざと蘇えってきて、一瞬タイムスリップしたような、不思議な感覚に陥ったのを覚えています。そんな感動にもう立ち会えないと思うと、いまだに何ともやりきれない気持ちになってしまうのですが、、、。

さて、今回の追悼コンサートでは、稲垣先生が最後の九州ツアーで演奏された曲や、私の結婚式のお祝に演奏して頂いた曲、そして初めて先生と共演させて頂いた曲など、個人的にも思い入れの深い曲を中心にお聴き頂きたいと思っているのですが、それとは別に大事にしょうと思ったことが2つあります。

生前、稲垣先生は「それが良く知られた映画音楽であっても、演奏機会の少ない現代曲であろうとも、本当に自分が良いと思う曲を選ぶこと」を大事にされていました。自分の心に率直であり続けることは、難しい事ですが、先生はそれを貫き通した方だと思います。

それから、先生のインタビュー記事で「ギタリストである前に音楽家であれ。という人が多いですが、僕は、音楽家である前にギタリストでありたいと思います。」といった事を語られていたのを読んだ記憶があります。私自身、ギターを弾く事の意味に迷った時、稲垣先生の演奏を聴いて、この楽器を選んだことは間違いじゃない。この楽器にしか出来ないことがあるんだなあ。と何度も勇気づけられました。

わざわざここに記するまでもなく、稲垣先生のような演奏は勿論出来ませんが、僭越ながら先生が大事にされた二つの信念だけは心に刻み、コンサートに臨もうと思っています。そんな訳で、コンサートを聴きに来て下さった皆様が、もしひとつでもお気に入りの曲を見つけて頂けたなら、そして少しでも「ギターっていいなあ」と思って頂けたなら、それに勝る喜びはありません。

最後になりましたが、今回共演して下さる、尊敬する先輩ギタリスト・中野義久先生。同門でもあり、同じく稲垣先生に首根っこを捉まれたギター小僧・溝口伸一君。稲垣先生の素晴らしさを九州に広めて頂いたフォレストヒルの森岡社長。そして今の私の土台を作って頂いた稲垣先生に心からの感謝を。

稲垣先生、先生の美しい音色と豊かで力強い音楽は、私たちの心に深く深く根付き、それはずっと消えることはありません。控えめな先生の事ですので「ときどき思い出してくれたらそれでええねんけどなあ」とおっしゃるでしょうけど、、、。
竹内竜次
2007年9月 広島ギター協会主催の合宿にて
2007年9月 広島ギター協会主催の合宿にて
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